骨盤矯正の時代がきた。

なんとなく自分の骨盤が出っ張っているような気がしてウェブで検索をかけたら「骨盤矯正」というものが引っかかった。よく女性誌で見かけるし、概念は知っていたけど中身は知らなかった。どうやら骨盤は開くし歪むらしい。

試しにセルフチェックしてみたところ、開いているし、歪んでいるようだ。特徴を調べてみると肩こり・腰痛・冷え性など特徴が完全に一致したので、なるほど私の骨盤は歪んでいるのかと納得した。

一般に、女性の悩みと思われていた骨盤矯正が私に腰痛をもたらしていた。これは隠された知の発見。骨盤矯正の時代がきた!と大喜びした私。餅は餅屋、整骨院の先生にきいてみよう!と馴染みに整骨院に行ったところ「お前の自己診断はすべて、完璧に間違っている」と指摘された。

まず前提として、ただしい骨盤なんてない。生まれつきある程度の歪みがある。これはもうどうしようもない。それに生活スタイルでの歪みがある。これは矯正できるし、私には矯正が処置されている。でも、この矯正を「骨盤矯正」とは呼ばない。いわゆる骨盤矯正が必要なのは外見でわかるくらいの歪みであって、私くらいの骨盤の歪みに対して骨盤矯正なんて言葉は使わない。私の骨盤は通い始めた頃からずっと治療が続いているらしい。

逆に言えば「骨盤が歪んでいる」という指摘はほとんど全人類にあてはまる。これは「嘘ではないけど本当でもない」な性質があるので、よく注意した方がよくって、そもそも「正しい状態」ってなんだ、って話である。生まれつき誰でも歪んでいるものを正しい状態にする。それは、一時的に正しい状態に戻ったとしても、またすぐ元に戻ってしまう。無理をして常に正しいとされる状態に引っ張っておくことは「正しい」のか。

生まれつき、脚の長さが違う人がいる。そういう人は「正しい直立」をすると骨盤が歪んだ状態になる。骨盤を正しい位置におくと、直立できない。片方を正すと片方が間違う。「正しさ」とは、一体どこに置くべきなのか。

ずっと続ける必要があるものを「治療」とは呼べない。それはもうライフスタイルであって、ライフスタイルは趣味性、楽しさがなければ続かない。なら、生活に無理がなければ、それが「自然」であって、正しさより自然さ、生きていけることを目指すのが治療ではないか。先生のおっしゃることはもっともに感じられた。

なるほど、これが陰謀史観。未知なる発見とそのテンアゲ。「変なことをしないように」と私の腰痛改善に必要なストレッチを教えてもらって帰宅。

骨盤矯正の時代が終わった。

こうして時代がはじまり、おわる。去りゆく時代を見送るため、ストレッチをした。