東京駅まで展示を見に行った。東京駅は混雑しているし、この場所に来るのはたいてい新幹線のためなので、急いでいるか疲れているかしない。足早に通り過ぎるための場所と思っていたから、いろいろな店があることに気づいたのはなんと今年になってからで、以来、何度か足を運んでいる。人が行き交う場所にはなにかがあるものだ。展示の内容はよかった。惜しいのは、作品なんてものはどれも手が出せない値段だろうと思っていたけど、そこそこがんばれる値段だったこと、そしてまもなく展示もおわるような時期に行ったせいでなにもかも完売していたことだ。

書店に委託販売されている同人誌を買うためにあまり縁のない場所にある本屋まで足を運んだのだけども、Googleマップの言うとおりに進みながら駅を降りて、やっとその駅がかつての通勤経路で、その本屋を何度も利用していたことに気がついた。書店の名前も初めて知った。通勤していた頃とまったく同じ道を歩きながら不思議な気分になる。その頃はいろいろなことがあって、その出来事のどれもが通勤とはなんにも関係ないのだけども、あの頃に戻ったような、というとそれはクリシェな表現になってしまうのだけども、懐かしさとしか表現しようのない気分になった。特別になにかの出来事を思い出すわけではないし、場所自体には思い入れもないし、それこそ通勤なんて機械的に繰り返していただけの作業でしかないのに、そうかこれが懐かしさか、と、なんでもいい場所、どうでもいい場所、なんでもないこと、どうでもいいことにも、何かは宿るのだと思う。

同人誌は最後の一冊で、枯らしてしまった。そういうば、良い本屋だったよなここは。改めて名前を覚えておくことにした。